NEWS NO.147(2015年度)
第3回エアロゾルシンポジウム―宇宙・空・地表面 を開催
酪農学園大学・黄砂研究グループが主催した公開シンポジウム「第3回エアロゾルシンポジウム―宇宙・空・地表面」が、11月26日(木)本学学生ホールで開催され、市民、学生や教職員およそ80名が出席しました。
近年、エアロゾルが地球環境に及ぼす影響は注目されており、医学、農学、理学などの幅広い分野で研究されています。このシンポジウムは、エアロゾルに関して、分野を横断して情報交換することを目的として開催されました。
第一部の招待講演では、北海道大学低温科学研究所の藤吉康志教授が、「雲とエアロゾルの多層構造-その意味と役割-」と題して講演を行いました。藤吉教授は、対流圏に存在するエアロゾルの多層構造が、雲の発生と密接に関わり、地球温暖化に影響を与えていることなどを説明しました。また、グライダーや、さまざまな地上観測装置を用いて大気を詳細に観測する取り組みを紹介しました。
2つめの招待講演は、札幌管区気象台 気象防災部 地球環境・海洋課 地球温暖化情報官の石崎士郎氏が「ひまわり8号とその応用」と題して講演しました。石崎氏は、1978年から気象観測を行っている静止気象衛星「ひまわり」の現状を紹介し、2014年10月に打ち上げたひまわり8号は最先端技術を搭載し、7号では30分かかっていた観測を10分以内で行えるなど、高精度の観測が可能であることを説明し、今後はその特性を生かした技術やソフトなどを開発、作成していくと述べました。
第二部の講演では、本学獣医学類の能田淳准教授(環境衛生学ユニット)が、「異なる空間におけるバイオエアロゾルの挙動」と題して講演を行いました。さまざまな物質が大気中を移動して飛来し、それによる健康被害が注目されていることを述べ、特にバクテリアを含むバイオエアロゾルに着目した研究を紹介しました。実験室において、チャンバーを用いてバイオエアロゾルと環境中エアロゾルを混合し、バクテリアの量の変化を測定することで、2つのエアロゾルの相互作用を測り、今後はバクテリアの不活性化に発展させたいと話しました。
続いて、本学大学院酪農学研究科の出村雄太さん(修士2年)が、「黄砂発生地域における地表面状態の経年変動の分析」と題して、ゴビ砂漠におけるダストストーム発生の研究について報告しました。また、同研究科の祖父江侑紀さん(修士2年)は、「モンゴル国ゴビの植生変動における人為的要因の解析」と題して、モンゴル国のゴビ砂漠に着目し、1985年から2013年における砂漠化・植生退化の状況を示し、家畜の移動や降水量の変化などとの相関関係についての考察を報告しました。
最後に、本学環境共生学類の星野仏法教授(環境リモートセンシング研究室)が、「黄砂はどこからどこまでか?」と題して講演を行いました。毎年春と夏にモンゴルのゴビ砂漠に赴き、およそ10年間調査を続けてきた研究内容を紹介し、黄砂は地球を一周して飛散しており、私たちの日常生活や健康に深く関わり、日本の生態系を脅かす可能性も考えられると話しました。