NEWS NO.148(2015年度)
実践農学で、長沼町の仲野満氏が講義
本学の農食環境学群・循環農学類の「実践農学」では、農業の分野でさまざまな立場で活躍している外部講師を招き、講義を行っています。11月27日(金)は、長沼町で農園とファームレストランを経営する仲野満氏が、「夢を持つと言う事」と題して講義を行いました。
仲野氏は、長沼町で、リンゴをはじめ、ブルーベリーやプルーンなどの果樹のほか、ジャガイモ、カボチャ、小豆などを栽培しています。1995年には農園に隣接する敷地にファームレストラン「ハーベスト」を開業し、道内における農園直営レストランの先駆けとなりました。また、スイーツ工房と物販スペースを併設したファームショップを作り、農園産リンゴのジュース、アップルパイ、焼き菓子、ドレッシングやジャムなどのオリジナル商品を販売しています。
循環農学類の三木直倫教授(有機農学研究室)は、「小高い丘に位置するレストラン・ハーベストは、現在は大混雑するほど繁盛しています。今日は仲野さんにそこまでに至る紆余曲折を話していただき、皆さんが農業に対してどんな夢を心の中に持つのか、そのヒントにしていだたきたいと思います」と話しました。
「私が高校を卒業した30数年前は高度経済成長期で、就職先はたくさんあり、農業は重労働で辛いということで、とても嫌われていました。私はリンゴ農家の4代目で、跡を継ぐ以外の選択肢は許されず、しぶしぶ就農しました。昼はリンゴ園を手伝いながら短期大学の二部に通い、卒業時に付き合っていた女性にプロポーズをしたのですが、農家は絶対にいやだと断られてしまいました。その時に心に決めたのは、いやがられる農家を、かっこよくて儲かるものにしてやろうということでした。
そのころ、大学の同級生が継ぐ十勝の大規模農家を見て、自分の実家のリンゴ園との違いに驚き、大規模な畑作農家をやりたいという夢が芽生えました。リンゴ園は父親に任せて自分は畑作を始め、最初は小さな面積に小麦や小豆を栽培していましたが、どんどん面積を増やして、10年後には15haほどになって売り上げも大きく増えました。しかし、リンゴ園には消費者の方々がおいしかったと喜んで何度も買いに来ます。その様子を見て、ただ金を儲けるためではなく、消費者と直接つながる農業に魅力を感じ始めました。
レストラン・ハーベストを建てたのは、「ログハウスの作り方」という本を読んで興味を持ち、子どもがプラモデルを作るような感覚で、庭に小さな丸太小屋を建てたのがきっかけです。それが自信になり、28歳の時、カナダから木材を100本輸入して、友人たちと共に4年をかけてログハウスを建ててハーベストをオープンさせました。長沼スキー場に来るスキー客を目当てにしたカフェとして、メニューは3品くらいで、妻とパートさんの2人で営業を始めました。場所がわかりにくいこともあって、お客さんは1日2~3人程度でしたが、農業を一生懸命やっていれば収入に困ることはないと、危機感は全くありませんでした。
転機となったのは、ある方からアップルパイがおいしくないと指摘されたことで、札幌の老舗のお菓子屋さんを紹介されて勉強に行きました。ハーベストでは、ハネ品のリンゴを使うなど原材料費を極力おさえて作っていましたが、その店は素材を吟味し、従業員の方たちが快適な環境の中で仕事をしていました。良い商品を作るためには、良い素材と、それを作る人たちの働く環境が大切だと痛感し、考え方を変えました。
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レストランを開業して今年で20年になり、現在はレストランの売り上げが1億2千万円、農場が7千万円です。儲かる農業なんて無理だ、ログハウスを自分の手で建てるなんて無理だと言われましたが、私は実現できないとは思いませんでした。スタートしなければ、ゴールはありません。皆さんも夢を持って、決してあきらめないでください。
ハーベストでは地元の食材を使い、地元の人たちを雇用しています。そして、日本全国からお客さんが訪れてお金を使ってくださり、それが地域を豊かにしています。地域の人たちが力を合わせて地域振興につながる産業を作る、農業もその産業の一つになれる大きな可能性を持っています」。