NEWS NO.57(2015年度)
実践酪農学で、後志農業改良普及センター所長 出雲将之氏が講義
本学農食環境学群循環農学類の「実践酪農学」では、農業の分野でさまざまな立場で活躍している外部講師を招き、講義を行っています。6月26日(金)は、後志農業改良普及センター所長の出雲将之氏が「和牛繁殖農家の現状と展望」と題して講義を行いました。
はじめに猫本健司准教授(実践農学研究室)が、「出雲さんは、普及指導員として38年間勤務し、主に肉牛関係の技術普及に尽力してきた方です」と紹介しました。
「一口に国産牛肉と言っても、黒毛和牛、交雑牛、ホルスタイン去勢牛、ホルスタイン廃用牛など、さまざまな種類があります。その中のおよそ6割をホルスタインが占めており、国産和牛の重要な供給源です。スーパーで販売している牛肉には個体識別番号が表示されていますので、検索すればどのような種類の牛肉か、生産から流通まで全てがわかります。購入する前にスマートフォンなどで検索して、お買い得の肉を探してみるのもいいかもしれません。
畜産農家は、子牛を10カ月ほど飼育して素牛として市場に出荷する繁殖農家と、購入した素牛を肥育して肉として出荷する肥育農家の分業制が主流です。北海道では9割以上が繁殖農家で、その理由は、道内は牛肉消費量が少ないため、肥育すると肉の出荷に輸送コストがかかってメリットが少ないからです。北海道では、1カ月におよそ5,000頭の素牛が出荷されています。
理想の素牛は、280日齢(※生まれてからの日数)で体重300kgです。哺育期にしっかりと栄養を与えることで、病気に強く発育の良い素牛に育てられます。以前は1日に与えるミルクの量は4リットルと言われていましたが、現在は6リットル以上を与えます。そして100日齢ほどで親牛から離し、スターター(※子牛育成期用の離乳食)を食べさせます。スターターは胃の中で発酵、分解されて揮発性脂肪酸となり、これが胃の絨毛を発達させて、消化力の高い胃袋を作りますので、しっかりと食べさせることがとても大切です。
北海道は草資源に恵まれており、本州とは違って広い土地で牛をのびのびと育てることができ、牛を飼育するには最適の土地です。私は38年間を普及指導員一筋に働き、農家さんに技術指導や経営指導を行ってきました。新しい技術を入手して適切なアドバイスを行うことで、子牛は良く育ち、市場評価が上がります。農業にとって技術はとても重要です。
アドバイスの結果がうまくいかず辛い思いをしたこともありましたが、一生懸命やっていれば、農家さんは少々の失敗は許してくれました。皆さんもこれから、いろいろなことにチャレンジをする機会があるでしょうけれど、まず何よりも、手を抜かずに一生懸命やるという姿勢を忘れないでください」。