農食環境学群 循環農学類3年 喜多遼太朗
私はオーフスというデンマーク第2の都市から西に30㎞ほどのところに位置するFuttingという町の酪農家で研修を行っています。搾乳牛100頭、育成牛80頭のデンマークでは小規模な酪農家です。牧場主、従業員1名、私の3名で仕事をしています。ここの酪農形態の特徴は1日3回搾乳を行っているという点です。

住宅
築80年ほどの家。私は半地下の部屋に住んでいます。
今月は、搾乳、給餌、哺乳などの基本的な仕事を教えてもらい、それらを覚えるという感じでした。搾乳や給餌などに関して、基本は日本とそこまで変わらず、あまり戸惑うことなく覚えることが出来ました。しかし、哺乳に関しては、すごく手を奇麗にするよう気を付けています。
2週間ほどで搾乳を1人で任せてもらえるようになり、3週間を過ぎた頃に、これらの基本的な仕事は任せてもらえるようになりました。しかし、不慣れな作業、時間がかかってしまう作業がまだまだ多く、きちんと時間内にこなせるようになるには時間がかかりそうです。

パーラー(8頭ダブル)
搾乳は1人で行います。

ミルカー
4頭ずつミルカーを付けていきます。

子牛
哺乳時、手を奇麗にすることをすごく重視します。
ミルクは粉ミルクではなく、
タンクから取った乳を使用します。

搾乳牛への給餌はブロック状に切り出した餌に
スタンチョン自体が近付いていくものを
使用しています。
私がデンマークの酪農で実際に働き、感じた事は、“国を挙げて農業を考えている”“仕事効率を重視する”という2点です。
“国を挙げて農業を考えている”とは、酪農を取り巻く環境が日本とは大きく違う事から感じました。私もまだ一部しか知りませんが、農業に関する法律(飼育方法、糞尿散布方法など)が非常に多くあります。また、一括ですべての牛の情報がクラウドで管理されています。スマートフォンで個体番号を入力するだけで、その牛の情報がすべて確認できるシステムが50年ほど前から確立されているそうです。それらについて知るたび、いつも驚かされています。
次の“仕事効率を重視する”に関しては、酪農に限らずデンマーク国内すべての仕事現場で感じられます。私の農場では、無駄な動きを最小限にするという事をとても重視します。
どのタイミングで何をするか、どの作業を同時に行うかなどに対し、多々注意を受けています。日本で働いていた時に、ここまで考えて仕事をしたことがなかったので、すごく驚きました。また、デンマークでは仕事で使用する机、椅子は高さが調整できるものを使用しなければならないという法律があります。このようなところからも、仕事効率を重視する国柄を伺うことができます。
牧場主が言っていた印象的な言葉があります。
“人間に使えないものは牛にも使わない”
さすがアニマルウェルフェア先進国だと感じました。削蹄、除角など、様々な面でこのことが感じられます。
今新鮮に感じていることも、1年後には当たり前になってしまいます。
新鮮に感いることができる今が1年間で貴重な時間だと思います。
今感じている新鮮な気持ちを大切に日々生活していきたいです。
余談ですが、今回の研修がデンマークの新聞で記事になりました。デンマークと日本の酪農の違いや、日本の酪農の現状、私の研修理由、夢などを話させていただきました。

デンマークの新聞